電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

SE24001

タイトル(和文)

伊方発電所訴訟最高裁判決の現代的役割と課題―行政裁量と司法審査手法に係る検討―

タイトル(英文)

Contemporary Issue for the Ikata Power Plant Case -Examining the correlation between administrative discretion and judicial judgement-

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背  景
平成4年10月の伊方発電所訴訟最高裁判決(以下、「伊方判決」という。)は、原子炉設置許可処分は専門技術的判断を要するものであるとして、処分行政庁が許可するにあたって依拠した基準に合理性があったか否か、及び許可をするに至った判断過程に看過し難い重大な過誤・欠落があったか否かにより、処分の適法性を審査するという司法審査手法(判断過程審査)を採用した。この審査手法は、原子炉設置許可を巡る行政事件訴訟において、先例的意義があるとされている。
しかし、平成23年3月の福島第一原子力発電所事故を契機として実施された平成24年の原子炉等規制法の改正等により、処分行政庁の原子力規制委員会への変更や、原子炉設置許可時の安全性審査における原子力規制委員会自らの規則(以下、「新規制基準」)制定等、本判決の判断の前提となる制度の見直しが行われた。
目  的
伊方判決が示す原子炉設置許可処分の適法性に関する司法審査手法の先例的意義が、制度改革を経た現在も存在しうるかについて、平成24年の原子炉等規制法改正の法文比較や、法改正後下された原子炉設置許可処分を巡る裁判例の分析を通じて明らかにする。
主な成果
原子炉設置許可処分に際しての専門技術的知見に基づく行政裁量を是認し、判断過程審査を採用した伊方判決の先例的意義は、制度改革を経た現在も妥当する。その理由として、以下の3つの点を明らかにした。
(1) 改正後の原子炉等規制法においても行政裁量が是認されており、判例変更の意義に乏しいこと
一般的に、処分の根拠規定が不明確(多義的、抽象的)な文言で定められており、処分の目的・性質上、専門技術的判断を必要とする場合は行政裁量が認められ得る。
改正前の原子炉等規制法下で設置許可要件は「……災害の防止上支障がないものであること」(第24条第1項第4号)と規定されていた。「災害の防止上支障がない」かどうかは、文言が不明確であり、一義的に確定することができない。また、原子炉設置許可をするにあたっては高度な最新の科学的、専門技術的知見に基づく総合的判断を必要とする。そのため行政裁量が認められていた。
改正後の設置許可要件は「……災害の防止上支障がないものとして原子力規制委員会規則で定める基準に適合するものであること」(第43条の3の6第1項第4号)とされた。「災害の防止上支障がない」という文言は同様であるため、改正後も処分行政庁の裁量に委ねられており判例変更の意義が乏しい。
(2) 処分行政庁が原子力規制委員会に変更された後も、第三者視点の専門技術的知見の確保が維持されていること
改正前の原子炉等規制法では、原子力委員会(昭和53年以降は原子力安全委員会)という第三者の専門学識経験者の関与を通じ、処分行政庁の判断の専門性を担保していたことが、処分行政庁に行政裁量が与えられる根拠とされていた。平成24年法改正は、処分行政庁を原子力規制委員会に変更するものであったが、原子力規制委員会そのものが高度な専門性・独立性を具備する行政委員会であるため、処分行政庁の行政裁量の根拠となる第三者視点の専門技術的知見の確保は法改正後も不変である。
(3) 制度改正後の判決においても、判断過程審査の考え方が維持されていること
法改正後に言い渡された原子炉設置許可処分を巡る行政事件訴訟の判決である川内原子力訴訟第一審判決、玄海原子力訴訟第一審判決、及び大飯原子力訴訟第一審判決では、処分の適法・違法という結論の違いはあるものの、伊方判決と同様に、判断過程審査の考え方が採用されている(表)。
 今後の展開
伊方判決やその後の裁判例において採用された判断過程審査の考え方やそこで提起されたその他の法的論点が、今後の裁判、行政、立法にどのような影響を与えうるかという点について検討する。

概要 (英文)

The Supreme Court's decision in the administrative case lawsuit against the Ikata Nuclear Power Plant's reactor installation permit had a significant impact as a legal precedent. The characteristics of this case are as follows.
(1) It was clarified that the court should respect administrative discretion because the reactor installation permit involves scientific expertise.
(2) When determining whether the permit is legal or illegal, the court should judge from the perspective of whether there are any serious errors or omissions in the process of decision-making.
On 11 March 2011, we experienced the accident at the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant. Since then, the law on which the installation permit for nuclear power is based has been amended, and the government authorities that approve installation permits have been also changed.
By way of these amendments, can the ruling in Ikata case still be considered appropriate? In this paper, we clarify the following two points.
(1) The law that forms the basis for the installation permit for nuclear power plants has been revised.
However, the structure of the law is almost the same way, and judging from the structure and purpose of the law, administrative discretion in the installation permit for nuclear power plants is still respected.
(2) The amendment of the law transferred administrative authority over nuclear power plants to the Nuclear Regulation Authority(NRA). However, as NRA also has the knowledge and skills of scientific experts, administrative discretion should be still respected.

報告書年度

2024

発行年月

2025/03

報告者

担当氏名所属

島津 裕一郎

社会経済研究所

キーワード

和文英文
原子炉設置(変更)許可 Nuclear Reactor Construction Permit
取消訴訟 Action for the Revocation of Administrative Dispositions
行政裁量 Administrative Discretion
司法審査 Judicial Review
原子力規制委員会 Nuclear Regulation Authority
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry